雑感:
この作品は、俺の中では非常にアンビヴァレントな作品である。
まず最初に危惧したのが、制作者が違う前作『burst error』でのキャラ像が踏襲されているか、という点であった。その点は、主人公の台詞回しや無駄なコマンドを選んだ時の反応など、完璧に近い状態で再現されていたと言えるのが微笑ましい。
次に、果たして前作をやっていない人にはどう説明していくのか、という点。この部分は、前半のキャラ同士の関係(特に小次郎と弥生、まりなと本部長が)が非常にくどいくらいわかりやすく説明されていて、かつ前作をやった人なら思わずにやりとさせられる部分もあり、これなら大丈夫だ。とはいえ、終盤になって、エルディアやEVEが絡んでくるあたりになると、さすがに舌足らずだ。
ゲーム自体はマウスクリックができる部分が表示されるなど、簡略化を図った秀逸な出来。一応の文字飛ばしやセリフ再度読み機能もあり、可である。
ただ、このゲーム、いや、この作品に対して、どうしても許せない部分がある。それはエンディングだ。
もしかしたら、別のエンディングがあるのかもしれない。だが、そんな雰囲気はとくに見られないし、そもそもマルチエンディングにするなどEVEシリーズとはいえない。
初期『EVE』にしろ、『Lost One』にしろ、自分の中にひとつの物語を持っていて、しかもそれを自己の内部で完結させている(とくにLostOneのエンディングは秀逸だった)。だが、この『ADAM』は何も完結していない。しかも、EVEやLost Oneが慎重な注意を重ねて築き上げてきた旧キャラの絆を完全に崩壊させてしまっている。そして犯人も捕まらず、その目的も黒幕も不明のまま、最後には『To be continued……… Someday』だと?いいかげんにしろ。過去の作者に失礼だ。それ以上に、この『ADAM』という『作品』を買い求めた人に対して侮辱しているとしか思えない。
声優も相変わらずグレートだし、良いアドヴェンチャーを作る力はあるシーズウェア。いくら今のシーズを築き上げた作品とはいえ、いいかげん『EVE』の影から脱することはできないのだろうか?
(11/24,1999)
(2/20,2003:第3期パソゲェ批評発足に伴い指数-0.16)
(12/12,2003:第4期パソゲェ批評発足に伴い指数+0.36)
Generated by Review-HTML File Generator Ver.4.00
44 Creations, Inc.