雑感:
久しぶりにこだわり系の作品に出会ったので批評したい。
さて、このゲームは映画というジャンルを通して学園祭までの一ヶ月間、その準備にあけくれるという、設定としては別段目新しいわけではない。しかし、要所要所に挿入されるストーリーボードの決定や音合わせなどは、まるで自分が映画をつくっているような感覚にさせてくれる、新鮮な驚きがあった。良。
登場キャラクターも、多すぎず少なすぎず、また不要なキャラクターもなく、見事なバランスであった。ただ難があるとすれば、全キャラクターが完璧に存在意義を持つため、あるキャラクターが出てくるのがどうしてもストーリーを進行させるため、という感覚になってしまう。とくにシネマ研究会の財前先輩がそうだ。また、雅志(ヒロインの弟)はかなりいただけない。せっかくキャラクター達の設定や状況を身近にしようとしているのに、雅志という非現実的すぎるキャラのおかげでだいなしになっている。
もともと絵柄はアニメーション向きの絵柄なのだが、それを差し引いてもアニメーションはすごい。とくにエロシーンの乳の揺れとか。ただ、エロさと勢いを優先するあまり、初体験の女の子でもAV女優ばりの動きをみせているというのはどうだろうか。エロいことはエロいので、この路線を保ちつつ、初々しさがもっと動きに出るとよかった。
CTRL飛ばしはあるにはあるが、画面の切り替えなどがけっこううっとうしく、また一回のプレイ時間も長いため、しおしおするのは残念である。
ストーリーに関しては、王道と言っておこう。主人公達に逆境が次々と襲いかかるタイプの話だが、映画を作るというコンセプトが強く、見ていて飽きない。とくに、トゥルーエンドで、映画上映終了時に客席から拍手が沸き起こるシーンはあなたのハートをがっちりキャッチ。
ただ、ボーナスシナリオまで全てを見てはじめて作品が完成する。だったら、ボーナスシナリオは『ボーナス』などという名前にしないほうがよかったのであると思われるがどうだろうか。あのボーナスシナリオでより人間に深みや現実みが増し、成功している。
というわけで、なかなかの怪作である。映画などの専門的な話が頻繁に出てくるが、敷居が高くないというのが高ポイントであろうか。ただ、ストーリーの進行上なのかどうなのか、やたらにモノローグ(一人でしゃべる場面)が多い。それが気になるといえば気になるのであるが、これだけのヴォリュームの前にはそんなクレームも無意味である。
(3/20,2002)
(2/20,2003:第3期パソゲェ批評発足に伴い指数-0.07)
(12/12,2003:第4期パソゲェ批評発足に伴い指数-0.02)
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