雑感:
ゲームを終わらせたときの言い知れぬ脱力感の正体は果たしてなんであろうか。主人公を切り替えることができるシステムも部分的に切り替えられるだけであり、またその必要性も皆目感じない。まるで同社のマルチサイトシステムのできの悪い偽物を見ているようで心苦しい。それ以上に、キャラクターの位置付けがめちゃくちゃになってはいまいか。メインとなる主人公は自分の操る『実』であるはずなのに、実はすべきこともなく屋敷の中をうろつきまわるだけで、結局事件は実の先輩の探偵によって解決される。探偵と行動をともにする少女智佐登も、ただくっついていただけで捜査にそれほど役に立ったということもない。そもそも、キャラクターの位置付けや名前や顔をしっかりと胸に刻みこむ前に死んでいくキャラたち。お世辞にも良質といえるべき部分が見つからない。
行動すべき場所が赤もしくは青で示されていてわかりやすく、また何も印のない部分にもイベントがある可能性があるという移動システムのみ、合格点を与えられるといえる。雰囲気や文体、言葉遣いも比較的丁寧に大正時代の小説のような格調に揃えられていて、好感が持てたというのに、あまりにもお粗末なストーリー展開はどうしたことか。犯人にもまったく意外性がなく、かといって謎解きが面白いわけでもない。クリアしてもエロシーンの再現があるわけでもなく、いったいプレイヤーに何を楽しませようというのか、まったく見えない。
luv waveと同じ開発チームが制作したのだろうか、細かいメンバーまではわからない。だが、それとこの『散櫻』を比較すること自体がおこがましい。 はたして、シーズウェアがこうして敷居を高くして得たものは何だったのだろう。このゲームは以前、『禁断の血族』の完結編として制作された、という話だったが、エロあり、おちゃらけありのシリーズ前作までの方が数倍面白かったというのは間違いない。
格調高くして制作すればなんとなく凄いエロゲーに見えるという時代は、すでに終わりつつある、ということを認識しなければ、同社は生き残れない。
そして最後に個人的に言いたい。『EVE』のシリーズ化。これだけは開けてはいけないパンドラの箱ではなかったか。
(3/27,2000)
(2/20,2003:第3期パソゲェ批評発足に伴い指数-0.02)
(12/12,2003:第4期パソゲェ批評発足に伴い指数+0.10)
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